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ゾウのはな子を知っていますか?

井の頭自然文化園で暮らしたゾウのはな子を知っていますか? 1949年にタイから来日し、多くの人に愛されながらも昨年69歳の生涯を閉じたアジアゾウ。2017SPUR8月号では、武蔵野市立吉祥寺美術館が進めていた、はな子と一緒に撮った写真を集めるプロジェクト「はな子のいる風景」の取材を行いました。

このプロジェクトは、2016年5月にはな子が亡くなった後、美術館に寄せられた500枚を超える写真から一冊の記録集をつくるというもの。8月号の取材の時点では、まさに記録集の編集をしているところで、どういうものができるのかと想像を膨らませながらインタビューをしたのですが、先日、ついに完成したそうです。 

左が2017年SPUR8月号、右が記録集『はな子のいる風景 イメージを(ひっ)くりかえす』。記録集は、吉祥寺美術館ミュージアムショップにて販売中
左が2017年SPUR8月号の特集ページ、右が記録集『はな子のいる風景 イメージを(ひっ)くりかえす』。記録集は、吉祥寺美術館ミュージアムショップにて発売中

ページをめくると、1947年にはな子が誕生したところからはじまって、寄せられたもののなかで最も古い写真(1950年10月9日)から順に、計169枚の写真が収められています。写真の下に書かれているのは、写真が撮られたのと同日のはな子の飼育日誌。たとえば「昭和50年4月1日(火) 晴 象舎:最高16.0 最低11.0 現在12.0(℃) 象 特に異常ないが昨夜大変に暴れたようであった。……」、「平成2430日(月) 晴 象舎:最高17.0 最低10.0 現在17.0(℃) ゾウ 排便はやわらかい。放飼場へ出す。混合餌は少し残す。……」などなど。

左のカラー写真をめくってみると、驚きのしかけが!
左のカラー写真をめくってみると、驚きの“しかけ”が!

この記録集が面白いのは、基本的に写真はすべてモノクロなのですが、ところどころカラーの写真が貼られていたり(写真の裏側に何があるのかは、めくった時のお楽しみに!)、はな子が来日した日の新聞のコピーが挟まれていたり(それは昭和24年9月3日のことでした)、今回写真を応募した方たちへのインタビューをまとめた冊子が入っていたり(この冊子は涙なしでは読めません)と、一冊の記録集からどんどんイメージが拡張していくところ。はじまりは個人が保管していた一枚の写真ですが、それが一箇所に集められ、さらに記録集としてまとめられることで、その背景にどれだけ多くのものが隠されているのか(たとえば個人の感情や思い出、時代背景など)、が鮮やかに立ち上ってきます。私自身は、生きているはな子を一度も見たことがなかったのですが、この記録集を読んだあとは、彼女の人生を共に生きたような、見守ったような、なんとも不思議な気持ちになりました。

井の頭自然文化園のはな子が暮らしていた象舎。彼女がいなくなった今も多くの人が訪れている
井の頭自然文化園内のはな子が暮らしていた象舎。彼女がいなくなった今も多くの人が訪れている

この記録集の発売に合わせて、JR吉祥寺駅南北自由通路(はなこみち)、井の頭自然文化園 彫刻館では、この記録集に収められている写真から写真展「はな子のいる風景」が開催されています。明日15日までの展示ですが、記録集とともにぜひ足を運んでみてください。

提供元: SPUR.JP

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